世界遺産「日光の社寺」。国宝9棟、重要文化財94棟の文化財建造物を中核とする日本が世界に誇る文化遺産です。17世紀の日本を代表する天才的芸術家の作品群といわれ当時最高水準の建築技術によってつくられました。
その魅力は、なんといっても日光東照宮や日光山輪王寺大猷院などの圧倒的に絢爛豪華な建築装飾です。これらの建造物は、今日までその輝きを失っていません。伝統的な技と技術、そしてそれらを活かす知識を確実に継承し、保存修理を繰り返してきた匠の力がそれを成し遂げているのです。これらの「伝統建築工匠の技」は、2020年12月にユネスコ無形文化遺産として登録されました。
本展では、伝統建築工匠の技のうち、日光の社寺を彩り、比類のない豪華さときらびやかさを際立たせている装飾技術の「彩色」と「金工」に着目し、その美しさの謎に迫ります。普段は遠目にしか見ることができない、きらびやかな建築装飾の世界と伝統技術の粋をぜひ間近でご鑑賞ください。
日光東照宮では創建以来定期的に塗直しがおこなわれ、社殿の美しさとともに漆塗・彩色の伝統技術が受け継がれてきました。修理中の建築部材、漆塗・彩色の見本手板および材料・道具、彩色見取図などを展示し、日光社寺の美の秘密に迫ります。
東照宮陽明門平尾垂木彫刻 上下 生彩色見取図(日光東照宮蔵)
天然岩絵の具の原石(日光社寺文化財保存会蔵)
漆塗の道具(日光社寺文化財保存会蔵)
日光の社寺の修理で用いられる漆はすべて岩手県二戸市浄法寺の森で生産されています。浄法寺ではどのように漆の森を守り、漆を採取しているのか、道具や映像で解説します。
浄法寺の漆掻き道具(浄法寺歴史民俗資料館蔵)
黄金色に光り輝く日光の建築には、大量の金箔が使用されています。日光建造物を継承していくために欠かせない「縁付金箔」の生産は、現在金沢でのみおこなわれています。金合金の材料から1,000分の1mmの「澄(ずみ)」、さらに10,000分の1mmの「箔(はく)」に打ち延ばしていく工程を、道具と映像で紹介します。
箔工程の道具(石川県箔商工業協同組合蔵)
日光の建築の足元から屋根までを覆う圧倒的な数の錺(かざり)金具。金具のひとつひとつを見ると、さまざまな花や鳥、幾何学文様などが彫金されています。日光の金具修理を担う職人によって本物と同じ技法で製作された複製品の数々を、道具・映像とともに展示し、その製作工程について詳しく解説します。
東照宮陽明門腰長押隅金具
錺金具の製作工程
日光で最も有名な建築、東照宮陽明門。普段は遠目にしか見ることのできない上層組物の実物大模型を、本展覧会のために製作しました。黒漆塗に彫刻沈金が施された各部材、生彩色の技法で彩られた龍・息の彫物、錺金具ほか最高峰の建築装飾を間近でご覧いただけます。
東照宮陽明門の平成修理の知見をもとに制作された最新のVR映像『日光東照宮 国宝 陽明門』を会場内で上映。通常は高所にあるために見ることが困難な彫刻の形状や彩色も、高精細な映像で細部まで確認することができます。